ISLE  OF  MAN   TT  MOUNTAIN  COURSE

ウイックビジュアルビューロウ発売「マン島TTレース 2009」リーフレットから



「世界で最も過酷」と、評されるTTマウンテンコースは、驚きと衝撃の連続だった。
僕自身がYAMAHA YZF-R1スーパーストック仕様で体験した “狂気の世界”を綴る。

随分と昔の話で大変恐縮だが、僕は中学生時代、とある雑誌のページに釘付けになった。それは、イン側の石垣にヘルメットを擦り付ける様に走る、白いヘルメットのライダーの見開き写真だった。子供心に、得も言われぬ興奮を憶えた事を思い出す。それがマン島TTレースのレポートだと知るのは、かなり後だが、あの写真はどこのコーナーだったんだろう? そんな事を思いながら、このコース解説を書いている。
実際にレーシングライダーとして走ってみると、あれは⑨ハンドリーズか⑲グースネック手前のあそこかな。などと、そんな想いを馳せるのも良いものだ。皆さんはDVDと、このコース図を見比べながら、よりリアルなマン島TTレースを想像し、楽しんでいただきたい。
現代の1000ccレーシングマシンで、このコースを攻めるなんて、まるで狂人の様に思うかも知れない。しかし、マン島TTレースという“冒険”に挑戦するライダー達は総じて、陽気で温かい、愛すべき連中だ。彼らがなぜ、この過酷な挑戦を続けるのかは解らないが、少なくとも僕は、少年時代の大きすぎる夢が、ある日突然、手の届く場所に降りてきたとき、身震いする様な感覚と、喜びの狭間で「この冒険に挑戦する」という選択をしただけだ。
三宅島のバイクイベントで出会ったマン島TT現役レジェンド、イアン・ロッカー選手のチームに招かれ、2009年、唯一の日本人ライダーとして、彼のR1を駆り予選に挑戦。スーパーバイク、スーパーストック、シニアTTに出場が認められた。初レースのスーパーバイクは完走を果たすも、次のレース3周目、㉑ブラックハットでクラッシュ。夢をコンプリートすることなく全身数カ所の複雑骨折を背負い込んだ。しかし、この挑戦に後悔はしていない。いま僕が此所にいるのは、近年、マン島ライダーのパイオニアとして活躍した、故・前田淳選手の活躍や、このコースに挑戦した、日本の先輩方が積み上げた、多くの功績があったからこそだと感じている。このDVDを観て、そして、今このサイトをご覧になりながら、冒険エンターテイメントとしてマン島TTを楽しみつつ、ライダーやTTに関わる“愛すべき馬鹿者ども”の夢の断片を感じていただけたら、こんなに嬉しいことはない。 【November.2010.一部加筆】



① グランドスタンド
ここは、実際には直線ではなく、緩いS字状になっている、スロットルは全開。
スーパーバイクのトップライダーは、約290km/h以上を記録する。ピット側はバンピーで、激しくマシンが振られる場面もあった。
② ブレイヒル
ストレートからジェットコースターみたいな急勾配の下り→上りを駈け抜ける難所。「全開で抜けられる様になるには3年はかかる」と言われていて僕も苦労した。進入付近の交差点で、いきなりジャンプの様なウイリーがある。下りのボトムではGで躰が凄い力でタンクに押しつけられ、登り切ると路面のウネリでリフトアップを繰り返す。
③ クォーターブリッジ
スタートから約2km、交差点を右折するコーナー。下りで進入する、ブレーキング中にジャンプが有るのには驚いた。普段は交通量が多く、路面がスリッピーかつバンピー。コース序盤なので特に慎重に走りたい難所。
④ ブラダンブリッジ
正面に教会が見えるシケイン状のS字コーナー。立ち上がりに大きなギャップがある。
⑤ ユニオンミルズ
アップダウンがある、3つのコーナーが組み合わさった区間。1つ目の右コーナは、マシンを傾けながらジャンプ。GS手前から素早く全開にして、次の直線へ。ここから超高速区間となり、5速、6速を多用する。
⑥ クロスビー
6速の超高速左コーナーから、上り勾配の手前、右側にクロスビーのパブが見える。
6速のまま、ひたすら全開。上りながら前方は青い空しか見えない、度胸試しの様なポイント。頂点では必ず右車線から入らないと、ジャンプし過ぎてしまう。300km/h近くで馬鹿でかいウイリーをしなくてはならず、本当に恐ろしいが、だんだん慣れてくる。
⑦ バラクレーン
ここは映像に多く納められるので馴染みがあるだろう。進入で6速から2速まで急激に減速するので、スピード感覚が狂いやすく、実はコースアウトも多い。この先の左コーナーで2003年に起きたミルキィ・クオイルの大クラッシュはあまりにも有名。詳しくはDVD【The Isle of Man TT ドキュメンタリー】を参照願いたい。
⑧ T グレンヘレン
バラクレーンからここまで、日本のワインディングに良く似た区間が続く。
⑨ ハンドリーズコーナー
3速で切り返したいS字。立ち上がりのイン側に背の高い石壁が迫り、肩を壁面にこすり付ける様に抜ける有名なポイント。

⑩ ボトムオブバーガロー

イン側に白壁の家が見える、下りきったボトムにある左コーナー。イン側のライン上に大きな凹みがあり、5速であまり減速せずに突っ込む。ここはホントに恐い。前後サスは完全にフルボトムし、カウルの腹を路面にヒット、「バリッ!」っという音が辺りに響く。

⑪ カークマイケルコーナー

街の入り口に当たる右コーナー。ここから左右ギリギリに建物が迫る街の中を6速全開。280km/hオーバーでブッ飛ばす。ギャラリーとの距離が近く、テンションが上がる。

⑫ レーンカレン

街を抜け、左側にGSを見ながらアプローチ。アップダウンがあるコーナが連続する区間。トリッキーでブラインドのコーナーが4つ続く。家と家との間を3速で思い切りジャンプする名所。

⑬ T バラフブリッジ

最も有名なジャンピングスポット。2速で進入、右側の壁ぎりぎりを目指して飛ぶ。観客が多い見せ場。僕はここが苦手で、なるべく小さく飛んでいた。衝撃でチェーン切れを起こすマシンもある。実は、この先にTTで最も大きなジャンプを演じる場所がある。6速全開でのジャンプは、実に貴重な体験だ。

⑭ クオリーベンド

4速でロス無く抜けたいダブルS字。車速が高いゆえGでマシンがとてつもなく重くなった状態で切り返しを行う。ハイスピードで立ち上がり、サルビーストレートに繋げたい、タイムに影響が出る重要なポイント。

⑮ サルビーストレート

最も長いストレートと言われ、トップスピードは310km/h以上を記録する。とにかくひたすら全開。景色は溶け、色とりどりの美しい線になる。後半、全開のまま抜ける緩いコーナがある(怖い!)。ブレーキング時、不用意に身体を起こすと、超高速の風圧に殴られた様な衝撃が来るので気をつけたい。

⑯ ジンジャーホール

ストレートエンドのサルビーブリッジを1速でクリア。右手にホテルを見ながら左コーナーへタック。この辺りから最北の街ラムジーまで、コースの中で路面が最もバンピーな区間となる。シートに腰をおろす事も困難なうえ、マシンも馬鹿みたいに振られる、体力的にも本当にキツい。

⑰ パーラメントスクエア

ラムジーの目抜き通りの交差点。沿道には凄い数の観客が鈴なりにコースを見つめる。

⑱ ラムジーヘアピン

極低速の左ヘアピン。手前に気持ちいい高速コーナーがあり、車速を誤り易いので注意。ここからマウンテン区間に入る。僕は、ここで捨てシールドを剥がしていた。

⑲ グースネック
あまりにも有名な登りながらの右コーナー。目測を誤り易く、インに付けない選手も多い
⑳ ガスリーメモリアル
手前の左高速からトリッキーに左右へと切り返す名所。僕はここが大好き。島に入ると先ずここから振り返り、ラムジーの港町を望む。素晴らしい美しさに脱帽だ。Sストックのレース中、S.プラター選手が立上がりでガケ側に少しオーバーランしていた(映像あり)、メチャクチャ怖かったはずだ。
㉑ ブラックハット
Sストックの3周目、僕はここでクラッシュ。6速から4速へダウンしクリアする左高速コーナー。ブレーキングポイントからクリッピング付近までがバンピーゆえ、進入でミス。外側の土手に激突した。映像では僕のマシンがバラバラに散らばっている。
㉒ T バンガロー
超高速マウンテン区間での見所の1つ。登山鉄道の線路を跨ぐ形で3速クリアするS字コーナー。伝説のチャンピオン、J.ダンロップの銅像が望むパッシングポイント。歩道橋をくぐり、ヘイルウッドライズのストレートへ向け全開。と、言うか、この辺りはずーっと全開。まさに“狂気の世界”である。
㉓ ウインディーコーナー
手前にあるデュークの左を2個クリアーして400m程の直線。6速から4速へ落とし、車速を保って思い切りよく飛び込みたい。ここはサーキットに近い感覚でいける。強風でラインが流されるので要注意。
㉔ クレッグニバー
手前のケイトコテージでは、遠く望む海へダイブする様に5速でクリア(怖い!)。全開のトップスピードで2度ウイリー。正面に有名なバーが見える、やや下りの右コーナー。多くのファンで賑わう観戦ポイント。
㉕ ブランディッシュコーナー
クレッグニバーから約300km/hのトップスピードへ、わずかに減速、5速で飛び込む度胸試しの様な超高速左コーナー。ブラックマークを引きながらの立ち上がりは圧巻。
㉖ サインポストコーナー
クロンクニモナは左コーナーが3個連続する複合コーナー。サインポストはダグラスの街に続く右コーナー。下りでブレーキングが難しく、コース後半、ミスを起こしやすい。
㉗ ガバナーズブリッジ
普段、一般車両が入る事はできない。超タイトなヘアピンが2つ連なるシケイン状の最終コーナー。後はフィニッシュラインをまたぐのみ、慎重にクリアしたい。ここまで来ると何故か笑顔になってしまう。「帰ってきた!」と痛切に思う最終ポイント。